こんにちは。
非営利型一般社団法人ふたば相続・空き家相談センターの相談員しのです。
相続した実家などの不動産を売却する際、多くの方は地元の不動産会社に相談したり、一括査定サイトを利用したりしますよね。特に一括査定サイトは、複数の不動産会社にまとめて査定依頼ができるため、「便利そうだな」と感じる方も多いと思います。
便利に見える一括査定サイトですが落とし穴もあります
例えば、
「売却までに思ったより時間がかかってしまった」
「他の方法よりも安く売れてしまった」
といった失敗に終わるケースも少なくないのです。
今回は、不動産査定で損しないために知っておくべき“一括査定サイト利用時の注意点”について、わかりやすく解説していきます。
一括査定サイトのメリットと注意点
インターネットで「不動産 査定」と検索すると、数多くの“一括査定サイト”が出てきます。
これらのサイトでは、同時に複数の不動産会社に査定依頼ができるため、
• 各社の査定額を比較できる
• 対応の違い(丁寧さ・スピード感)を見比べられる
• 売却相場の「平均値」が把握しやすい
などのメリットがあります。
ただし、良い面ばかりではないということも知っておきましょう。
一括査定の注意点
不動産の一括査定はやったことはないけれど、自動車や引っ越しの一括査定はやったことがあるという方はいらっしゃるのではないでしょうか?
不動産の一括査定も自動車や引っ越しとほぼ同じで、「査定依頼後、複数の会社から連絡が殺到し、対応に追われる」ということになると思います。
ただし、自動車や引っ越しと不動産の一括査定で大きな違いがあります。
それは
「高額査定=高く売れる」ではない
ということです。
自動車の一括査定は「買取」が前提なので、最高額を提示した会社にそのまま売却すれば済みます。しかし不動産の場合、査定額はあくまでも査定額でしかなく、実際にその金額で売れるとは限りません。
中には媒介契約(売却の依頼契約)を取るために「〇〇万円で売れますよ!」と他社よりも数百万~数千万円も高めの査定を出す不動産屋も少なくありません。
以前、こんな話がありました
それは「一括査定をして一番高い査定額を出してくれた不動産屋に売却を依頼したけれど、なかなか売れない」というもの。
金額は実際のものと変えますが、査定額は5000万円。
近隣の調査してみると、ほぼ同じ条件で、更に駅に近い築浅の物件が4800万円で販売中でした。これでは5000万円で売れるはずはありません。
おそらく時間と共に値下げするか、その不動産屋が両手取引(売主だけでなく買主からも仲介手数料をもらうこと)をするために、買主を見つけたときに大幅値下げした金額で売るように言ってくることなどが考えられます。
そんなことするのって悪徳な不動産屋でしょ?
この話を聞いた方はそう思われるかもしれません。
ただ現実には大手不動産でもやっていたりします。
▶ よくある落とし穴
・ 高額査定に惹かれて契約したが、実際にはその価格では売れず、後から値下げを迫られた。
・「専属専任媒介契約(※他社に依頼できない契約形態)」を結んでしまい、売れないまま時間だけが過ぎた。
・ 適正価格を提示した誠実な会社を逃してしまった。
「高く売りたい」という気持ちは自然なものですが、査定額は“売れる価格”ではないということを、しっかり理解しておきましょう。
なぜ高額査定を出すのか?
では、なぜ不動産屋は高額査定を出すのでしょうか
それは、媒介契約を取りたいからです。特に一括査定の場合は、一括査定サイトへ1件につき〇万円というお金を払っています。もし査定が取れなかったら〇万円が無駄になってしまいます。そのため、媒介契約を取るための手段として高額査定を出すという業者が少なくないのです。
では、なぜ媒介契約を取りたいのか
それは、仲介手数料が欲しいからです。
不動産を売ると不動産屋は仲介手数料をもらえます。仲介手数料は、基本的には33万円~売却額の3%+6万円に消費税です。例えば3000万円で売れると、仲介手数料は1,056,000円です。更にその不動産屋が買主も見つけたら同額を買主からももらえます。
この仲介手数料が不動産会社の売上になるため、査定についてよく分からない不動産の売り手に対して高額査定を出し、媒介契約を取ろうとする不動産屋が少なからずいるのです。
失敗しないための査定の受け方
では、失敗しないためにはどうしたらよいでしょうか。
相続した不動産の査定を依頼する際の注意点
複数社に査定を依頼し、「根拠のある説明」があるかを比較する
ただ金額を提示するだけでなく、「なぜこの金額になるのか」「売れそうな根拠は何か」をきちんと説明できる会社を選びましょう。
査定額の“幅”が大きいときは要注意
他社より明らかに高い査定額を提示してきた会社があった場合は、その理由を具体的に聞いてみるのが大切です。納得できる理由がなければ要注意です。
媒介契約の種類も理解しておく
契約を結ぶ際は、「専任媒介」「専属専任媒介」「一般媒介」などの契約形態があり、それぞれメリット・デメリットがあります。内容を確認した上で、納得して契約しましょう。
良い不動産屋のチェックポイント
不動産の売却は、「どこに頼むか」に加え「誰に担当してもらうか」も非常に大切です。
いいことだけでなく、デメリットも説明してくれるか
「高く売ります!」などのいいことばかりを並べるのではなく、「この金額では売れない/時間がかかる可能性もある」と理由と共に正直に話してくれる担当者は信頼できます。
レスポンスが早く、丁寧な対応をしてくれるか
連絡が遅かったり、言葉遣いや態度が雑な場合は、売却後の対応にも不安が残ります。
囲い込みをしないか(他社からの問合せにもきちんと対応しているか)
売主の利益よりも自社の都合を優先する「囲い込み(両手取引をするために他社には介入させないこと)」をする業者は避けるべきです。
レインズ(不動産業者向けの物件情報サイト)に登録しているか、情報を現状に合わせて掲載しているかなど、販売状況をきちんと報告してくれるかもチェックポイントです。
まとめ:適正価格と信頼できる業者選びがカギ
相続した不動産を売却するには、まず信頼できる不動産会社に出会うことが大切です。高額な査定に飛びつくのではなく、「現実的に売れる価格」を正しく判断してくれる会社を選びましょう。
大手であっても中小の不動産屋であっても、みなさんが思う以上に高額査定や囲い込みをしています。もしこういったことをされてしまうと、売却に時間がかかったり、結果として他社よりも安い価格で売ることになってしまうこともあります。
もし「この不動産屋は信頼できそうなんだけど、査定額はこっちの不動産屋が魅力だなー」と思う時には、信頼できそうな不動産屋にその旨相談してみてください。
私は現実的な金額の査定をしていますが、「やっぱり高額査定の金額が魅力的です!少しでも高く売りたいんです!」というご相談をいただいた場合には、「ご希望の金額で売りに出してみましょう!もしその金額で売れないようでしたら、下げていきましょう」とお話しています。
売却まで少し時間がかかってしまうかもしれませんが、大切な不動産を売るのですから、納得できるほうが絶対にいいです。
疑問や不安があれば、遠慮なく相談してください。大切な相続不動産を、納得いく形で売却できるよう丁寧にサポートいたします。